車内に重い空気が流れる。 誰も何も言わず各々考えこむように黙りこんでしまった。 僕はと言うとただただ自分の手元を呆然と見つめていた。 そう・・・マネージャーの言うとおり。僕は心の中に渦巻いてるドス黒い感情を九条さんにぶちまけ 警察に突き出すこともせず 自分の感情を押し殺してあぁいう形での終止符を打つことを選んだ。これからもTRIGGERの一員として、九条天として大切な仲間と共に歩んでいきたかったから。大切な仲間、大切な場所。 みなで掴みたい夢の方を僕は選んだ。僕がTRIGGERの九条天であることを選んだが故に もう事を起こすことはできない。もう僕だけの問題では済ませないから。母さんの死の真実も僕は一生胸の内に抱えていくつもりだ。 事故を事件とすることはもう僕にとってゴシップに他ならない。そんなことになれば九条天の実の弟である陸の存在なんて すぐに見つかって病院にマスコミが押し寄せることになる。 あの子にとってストレスは大敵だ。守りたかったものを危険にさらすなんて愚行絶対嫌だ。陸に本当のこと話すべきなのか僕は正直悩んでいた。自分の家族のこんな大事な話を隠されるなんて誰だって嫌に決まっている。 本来なら隠すべきではないことなのは僕だって十分わかってる。でもあの子はこの真実に耐えられる?全て話して、楽みたいに怒れたら、それはそれでいいんだ。どうしてっ、なんで!!ってあの大きな瞳をさらに見開いて 悲痛な面持ちで問い詰めれられでもしたらどうにかなってしまいそうだけど。そうやって感情的になって怒りをぶつけてくれたらまだいい。僕が懸念してるのは自分のせいで、そもそもことが起きたんじゃと思いこむことだった。あの子の優しさは、時にあの子自身を容赦なく傷つける。 僕に怒りをぶつけるか、自分に怒りを燻らせるか。どっちに転ぶかわからなくて 陸に真実を伝えるのは一種の賭けだ。これからどうすればいいのか その答えはまだ見えない。でも今、僕がすべきことは一つ。静まりかえった車内に僕の深呼吸する音が響く。