マンションのゲートをくぐり、周囲に人がいない事を確認した後、 部屋番号とベルのボタンを押す。 陸さんのお母様に自分の名前を伝えると、ロックが解除され、先の自動ドアが開いた。 エレベーターへ向かっている最中も警戒心は緩めない。 陸さんには、週刊誌の記者が付きまとっている。 3日前、このマンションの近くで再び出くわしてしまったらしく、別件でラビチャをした時、その事を話しながら酷く怯えていた。 私にもしもの事があったらと懸念し、もう部屋に来ないよう頼んできたが、断った。 不安を抱えながらも、いつも他人の事ばかり心配して、自分を責めて申し訳なさそうにしている。そんな陸さんを放ってはおけなかった。 ガードを薄める事なく部屋まで辿り着き、扉の横のインターホンを押す。 「いらっしゃい。寒かったでしょう?あったかい飲み物用意してるから、部屋で飲んできて」 「ありがとうございます。お邪魔します」 お母様がキッチンで準備している間、洗面台に向かう。 陸さんの発作を引き起こさないよう、手洗いうがいをし、制服に粘着クリーナーを当てる。 その後、トレイを持ったお母様と一緒に陸さんの部屋に向かう。 「陸。紡ちゃんが来てくれたわよ」 「あ、はーい」 扉が開けられ対面する。 「いらっしゃい。今日も来てくれてありがとう」 「いいえ。お邪魔します」 テーブルにホットミルクを置かれた後、お母様がいなくなり、部屋に二人きりになる。 荷物を床に下ろし、クッションに腰かける。 「あの…陸さん」 「ん?」 「…大丈夫ですか?いつもより顔色が悪いような…」 「え?そ、そうかな?ちゃんと薬も飲んでるし、毎日いっぱい寝てるから、元気元気!」 「……」