陸の言葉全てが正しくて、天の胸に突き刺さる。天は目を丸くしたまま、陸を見つめることしか出来ない。そんなことない。今の陸をちゃんと見ている。天自身、そう言いきれる自信がなかった。 喉にまるで、ナイフを突き刺されたみたいだった。泣きそうになるのを堪えて、つんとして、声なんて出てこない。 天の表情を見て、陸の隣にいる三月が言い宥めるように声をかけた。「陸、分かったから。分かったから、もうやめてやれ。お前の言い分はもっともだけど、九条の気持ちも考えて…」三月の言葉に陸は俯く。ぽろり、ぽろり。下を向いたせいか、陸の瞳からは止まらなくなった涙が何粒も落ちていき、楽屋の床を濡らしていく。「……天にぃのこと、大好きだから。心配してくれて、色々言ってくれるの、悲しい時も多いけど、いつも嬉しかったよ。まだ、気にしてくれてるんだなって。でも、それと同時に、いつも寂しかった。天にぃはやっぱり、オレに向かって何かいう時、今のオレを通して、昔のオレを見ているみたいだから。天にぃが捨てた、天にぃの手にすがりついて泣きじゃくっていただけの弟なんてもう、どこにもいないのに。走れない弟がいたことは忘れるなんて、口先ばっかり。七瀬天がもうどこにもいないなら、七瀬天という兄がいた七瀬陸だってもうどこにもいないのに。……酷いよ、九条天」