「だめ、なんだよ。…天にぃにこんな気持ち、持っちゃ。世界で一番、天にぃが、大好き。好きだけど、だめなんだ。どんなに遠ざけられても、オレと天にぃは、血が繋がってるから。だから捨てないと、いけないんだ……疚しい想いは、捨てなくちゃ…」 腕の中でふるふると身体を震わせながら紡ぐ陸の言葉は、天の心を打ち震わせた。 陸が悩んで、捨てて、けれど捨てきれなくて、夜の街を彷徨っていた理由が、これだ、なんて。 涙を零し、イヤイヤと首を振る陸が、哀しくて。 そしてとても、愛おしくて。 身体を捕まえていた腕を緩めて、丸いその頭を両手で包み込むと、涙を落とし続ける瞳をじっと見つめながら、天は呟いた。「…捨てないで」 「……てん…に?」 「ボクも、同じだから。…だから、捨てないで」 そう。こんなことで、陸は悩む必要も、捨てる必要も、何もなかったのに。 こんなに苦しむ必要なんて、無かったのに。 自分がほんの少しの勇気を持って、陸に向き合っていたら。 陸は、苦しまなくて済んだのに。 哀しく、それでも嬉しい想いを乗せて、天は微笑むと。 陸の瞼に柔らかく唇を触れさせた。