あれから、生きるために必死だった。 Ωという性を利用しろ、と唆されて、ウリを始めたのだ。 抱かれるたびに、哀しいとか辛いとか、そういった感情の一切を感じなくなっていったように思う。 肌に当たる水滴が、体中に冷たさを教えてくれる。 もうずっと、ここ何年かは、自分が今生きているのか死んでいるのかさえ、あやふやだった。こうして、傷だらけになって、ずぶ濡れになって、ようやく全身で感じることができた。ああ、自分は生きているのだ、と。 そっと瞼を閉じる。 もういい。生きることにつかれたのだ、もう。 スマートフォンで助けを呼ぶこともせず、街はずれのブロック塀にもたれかかったまま、全身から力を抜いた。 これから先、生きていったとしても、自分の存在を望んでくれる人が現れるとも思えない。 今、ここで果てたとしても、自分を想って泣いてくれる人など、一人だっていない。「・・もう、いいよね・・・」 誰にともなく呟いて、終わりを待つ。 意識が途切れる間際、不意に、雨が止んだような気がした。