展示室で解説ボランティアの方がほかの来場者さんと話していたのが聞こえてきたのですが「もし焼けてなかったら吉光なんだから重文とかになってるでしょうね」と。鯰尾藤四郎は重文指定されていません。脇差 銘吉光 名物鯰尾藤四郎、それだけです。でも重文指定されていないからこそ、展示の制限が少なくて、いろんな時にいろんな場所で展示されうるのです。わたしが刀剣乱舞を始めてから、初めて見に行った刀は鯰尾藤四郎でした。2015年3月、刀剣乱舞リリースによる反響に応える形で、徳川美術館が急遽展示を決定しました。わたしはそれを見に行って、初めて見る刀で、見てみたもののいまいちよくわからなくて、よくわからないことが悔しくて、それから刀をたくさん見るようになりました。わたしの始まりの刀でした。そしてたぶん、鯰尾が燃えてなくて、重文指定とかされていて、そうしたらあの3月に鯰尾は急遽展示なんてされなかったのかもしれません。……ねえ、今日鯰尾の展示ケースの前でボランティアさんの言葉を聞いて初めてそれに思い至ったのです。焼けて、それでも望まれてこの世にあり続けた刀が、焼けたからこそあの日わたしの前に現れて、あの日わたしはあの刀を見たからこそ、今ここまで続いてきているのだって。