彼の家は年の離れたお兄さんと妹さんの三人家族で、高校生になった木下くんのお弁当にまで手が回らず、最初はお昼代を渡す形式だった。でも、それだと食べ盛りのゴリラはバカみたいに大きいコロッケパンとかおにぎり五つとか栄養の偏るご飯を買ってしまうので、私がお父様と木下くんのお兄さんに申し出てお弁当を作る事にしたのだ。料理作りは趣味だけれど人に食べてもらう機会は少ないので、私にとってもWinWinの取引だった。木下くんは「マジで!?マジで!?マジで!?」って百回くらい叫んでなぜか床を転げ回ってたけど、お兄さんはとても喜んでくれた。実は、今日遅刻しかけたのは、そのお弁当に入れる卵焼きを失敗して作り直してたからなんですけど……悔しいから教えません。